雪が降るとき(連続ドラマ1) http://wataken222.blogspot.com/2015/03/1.html
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雪が降るとき(第四話) http://wataken222.blogspot.com/2015/04/blog-post.html
雪が降るとき(第五話) http://wataken222.blogspot.com/2015/04/blog-post_4.html
僕と良美は車に乗り込むと無言のまま実家についた。
お腹をさする癖がしっかり板についた頃、後戻り出来ない事後報告だった。
親父は相変わらず僕を認めていない、この感じはわかっていたし、想定の範囲だった。
たんたんと事の成り行きを説明し、無言のままの親父と母親をそのままに帰ろうとした時、想定の範囲外の事がおきた。
「もうすぐ、生まれるんです。私たちの子供です、そしたらお父さんもお祖父ちゃんですよ」
親父の眉が動いた。怒ったような口調で
「まだ、産まれてもいないのにお祖父ちゃんはないだろ」
照れ隠しだと僕は思ったが、良美はそうとは受け取らなかった。「まだ、産まれてもないのに」が良美の中で彼女の精神を司る何かをズタズタにしたのだ。彼女は無言のまま、僕と一緒に実家を後にした。
車の中では永遠に続くような闇を思わせる沈黙が続き、僕はたまらず、ラジオをつけた。
``言葉ひとつ足りないくらいで♪全部壊れてしまうような♪かよわい絆ばかりじゃないだろう♪さあみつけるんだ僕たちのホーム♪``
良美は泣いていた。顔を真っ直ぐにし目を見開いて涙を流していた。何かを決意した様子だった。
翌日、良美が病院に運ばれた。出産ではなく手首を切ったのだ。僕が見つけ車で病院までぶっ飛ばした。死んでもいいと思って飛ばした。
良美の命も赤ちゃんも無事だった。よかった、本当によかったとその時は泣いたが、本当の苦しみがスタートしていた。
彼女は荒れに荒れた。毎日、私なんか死ねばいい、この子も望まれてないのと、ひたすらいい続けた。何度も病院に行った。検診ではなくリストカットだ。
手首は傷だらけになり赤黒く変色して、妊婦であることを忘れたのか、妊婦であることが理由なのか、彼女も僕も訳がわからなくなっていった。
僕は酷く疲れていた。
このことは誰にも言えなかったし、親に言えば離婚しろと言われるのがわかっていた。子供を身籠っている彼女を放って生きていける訳がなかった。放っておけば母子ともに死ぬだろうと確信させるには充分な毎日を過ごしている。そのうち僕のせいだ。僕が全ての原因だと思うようになっていった。
そう、高校3年の冬も僕がいけなかったんだ。
僕は俊太と毎日一緒に帰っていたが、その日はたまたま俊太は休みだった。風邪をひいたらしい。
僕は一人で学校を後にしたその帰り道、直美が待っていた。直美は僕の顔を見るとスタスタと歩いてきて僕の前に立ち止まると
「好きです、付き合って下さい」
といい、長い沈黙になった。彼女は永遠に沈黙を続ける覚悟をした目でじっと見つめられた。
「はい、わかりました」
と言ってしまった。俊太から直美のことが好きだと相談されたばかりなのに、僕はすんなり、オーケーしてしまったのだ。もしかすると俊太から相談されていなかったら彼女の事をまったく気にしなかったかもしれない。皮肉にも俊太はキューピット役になってしまった。
しかし、彼に言わなければならない。このことを、どうしようと悩んでいる間に次の日になり、俊太と一緒に登校している。俊太に説明した。俊太の顔は物凄くひきつり、お化けをみるような目で「そうか、、よかったな」と言った。それから卒業までの間いっさい話をしていない。
当たり前だ、この状況で僕を快く受け入れてくれる人間などいないであろう、もし笑顔で祝福されるとしたら、それはキリストとブッタぐらいだと思う。
僕は酷く悩んだ。親友の事が気がかりで直美のことをあまり考えられなくなっていった。付き合って下さいと言われた時、正直もの凄く嬉かった。僕も好きになっていたからだ。しかし、俊太との仲を考えると、どうしても彼女に「好きだ」と言えなかった。本当は言いたくて言いたくて仕方なかったのに。
僕は情けなくて弱くてダメな人間なんだとその頃から薄々感じていた。
結局何回かのデートをしただけで直美から降られてしまった。原因は僕にある。何年かした後に同級生から聞いた、直美が僕をふった理由は「好き」という言葉が欲しかったと。僕は一ヶ月毎日泣いていた。
良美の様子が少しだけ安定した頃、僕は家に帰りたくない思いが強くなっていった。心身ともにやられていた僕は新しく会社に入ってきた友子と仲良くなった。
すごく明るくて優しい女の子だった。僕は結婚してること、今奥さんのお腹に赤ちゃんがいることは話しをしていた。友子も安心感からか、よく話してくれるようになり、気がつけば、一緒に飲みにいくようになっていった。
しばらくすると良美が入院した。すぐに産まれた赤ちゃんを見たとき感動し、今までの苦労が吹き飛んだ感じがした。
良美に声をかけ、よかったと手を握ると
「お父さんにはこの子を会わせないで」
とハッキリと言った。
僕はわかったとしかその場は言え なかった。しかし、自分の親で、いくら仲が悪いと言っても親父からすれば初孫だ。会わせろと言わないわけがない。
僕は完全に板挟みにあった。
彼女はことある事に親父を自分に近づけるなと言ってキカナかった。
僕はまた精神的に疲れきっていた毎日に会社の友子は優しく接してくれた。この優しさは僕の傷だらけの心によく染み込んできて、僕は彼女のことが好きになってしまった。
僕は直美に言えなかった好きを引きずっていた。その一言が言えなくて一ヶ月泣き続けたのだ。今なら言える気がする。ぼくは妻帯者でありながら浮気ではなく本気で友子に告白し不倫してしまう。そして、それが良美にバレ、離婚することになり、友子とも別れることになった。
全部、自分が悪い。情けない。だから死のうと決意した。だが、ついさっき俊太から7年ぶりに電話がきて飲みに行こうと誘ってきた。僕は死ぬ前に彼にちゃんとあのときのことを正直に全部話し謝ろうと思い、やっと長い夜があけ僕は久し振りに眠りについた。続く