「智子って田渕の大ファンらしくて、毎月ライヴにいっているみたいよ、気持ち悪いよね、あはは」
保奈美は会社の同僚で何故か私を好意にしてくれる。智子も同僚。ただ保奈美は智子のいないところでよく彼女の悪口を私に言うのが癖だった。
そんな時、私は保奈美に合わせる。
「智子ってバンダナとかしていくのかなあ?」
「うわ、最悪~、してそうだよね。なんか想像しちゃった。」
昼休み、いつもは3人でランチを食べに行くのがパターンだが智子は会社を休んでライヴに行っていた。
だいたいOLが会社を休むと、ろくなことを言われないのである。
保奈美はスマホから目を離さずにランチも悪口もこなす。
よほど男友達が多いのだろう。
それもそのはず彼女は美人だった。美人すぎて社長が忙しい時には取引先の相手を頼まれるほどだ。そして彼女は男に対して口が悪かった。
「あらハゲ社長、先日の麻雀の負け、はやく払いなさいよ」
「勘弁してくれよ保奈美くん、秘書もいるんだ、そういうことは耳元でささやいてくれないと」
保奈美と秘書の間に一瞬の張り詰めた空気が漂うと、彼女はプイと振り返り私に小さいピースをしてきた。
私は彼女の性格や生き方に憧れていた。同期で入社して5年も一緒にいると仲間というかまるで家族のような感覚になる。できのいいお姉ちゃんのように感じるのだ。
私は久しぶりに休日ひとりで買い物に出かけた。
いつもは3人か2人で買い物に行くのだけど、今日はたまたま保奈美も智子も用事があるのだという。
なんだか彼氏がいる人は羨ましいのだけど、同時に面倒くさそうな感じもする。私はまだいいやと自分に言い聞かせた。
ひとりで街を歩くのは嫌いじゃない。けどたまに変な男の人に声をかけられたりするのが嫌すぎる。だいたい気持ちの悪い人が気持ちの悪い話し方で近寄ってくる。自分では格好いいと思っているのだろう。なんて幸せな人なんだろうか。
久しぶりに沢山服を買ってしまった。思ったより楽しんだ、帰り道、人の行列に出くわした。
あー誰かのライヴだろうか。バンダナをしている人が多い。多分これは田渕のライヴで間違いない。
少し気になって智子の姿を探しに行列に近づいた。
するとバッタリ目を合わせてしまった人が目の前で固まっていた。
保奈美だった。
保奈美の頭にはキッチリとバンダナが巻かれていて気合い充分の格好である。
私はとっさに「バンダナ姿も可愛いね」と言った。
終り。