2016年4月2日土曜日

Zombie

僕はペダルをこぐ度に出てくるいろんな映像を見ながらいろいろ考えていた。新聞屋から家までの道。

セッチャンのお母さんの顔や、まるでZombieになったセッチャンの顔、そのあと部屋の様子が頭に浮かんでくる。なんかあったようななかったような。

In your head In your head Zombie zombie zombie

ゾンビは何故ひとりではなくいつも群れをなしているのだろうか?1度死んでしまってから生き返ると本来は嬉しいはずなのに恐怖しかないのは何故なんだ。

家についた。学校に行きたくないなあと感じた。なんだ登校拒否はうつるのか?いや元々いきたいと思っている人間が少ないのであって本来はみな羨ましく思ってるんだきっと。それが許される環境を、入院や、体調不良、ただの不良、単純に来ないもの。

台所からまな板をたたく音がする。

離婚してから家族でご飯を食べることが増えた。いや毎日必ず朝晩一緒に食べるようになった。これに参加しないと母は烈火のごとく怒り狂うのである。

ただ参加することで1日のリズムはつくられている感じはしていた。たとえ今日のように学校に行きたくないと感じても行く気になる不思議な力がある。

おかげで弟と僕は体だけどんどん大きくなった。奇跡的に身長だけ伸びてくれたことに感謝している。

学校の帰りにセッチャンの家に寄った。

寝癖をつけたセッチャンがパジャマのままでてきて、ことあるごとに「fuck」「fuckin 」を繰返し言っていた。

僕が昨日黙って帰ったことを怒っていた。買ってきたポテトチップスが入ったビニール袋を出すとセッチャンは勢いよく叩き落とす。

「元気あるじゃん」と言って拾った。

「もしかしてセッチャン拒食症なの?」と聞いてしまってからヤバイと思ったが「違う」とすぐに返事がきた。

僕はやっぱり拒食症なんだと確信した。

僕は自分からペーパーを広げてセッチャンに葉っぱを催促すると慎重にキツく巻いた。それを彼女の口に運んで唾液で湿らせながらユックリと抜き取ったあとキスをしてから火をつけた。

鼻をすする音が聞こえてセッチャンをみると泣いていた。

僕は勢いよく煙を吸い込むと息を止めながらセッチャンに渡した。何度か繰り返した後、気づけばかなり深いとこまできてしまっていた。体のジンジンする感じはあっという間に脳に到達して真っ暗な部屋で僕とセッチャンだけ下に下に沈んでいくユックリユックリ。あわてて手をを繋いだ。大の字のまま。

下の階に住むゾンビたちがこちらを見ている、なんの感情も持たないただ生きる屍の目が不気味で、目だけこちらに向かってくる。よけながらさらに深く沈んでいく。

クランベリーズのボーカルが金ぴかで立っている。いつかみたPVだ。

戦場につれてこられた。爆音がする。危ないと思ってセッチャンを引き寄せた。

抱きあってキスをした。二人ともグルグル回りだす。

上に大きな先輩が覗いてお経のような呪文を唱えている。亮くんが描いた宇宙人が盆踊りを踊っている。酔っぱらいがゾンビを説教している。

学生服姿のゾンビとスーツをきたゾンビは無表情で電車に乗る。

酔っぱらいがことさら人間らしく見えた。

上からピザが降ってきてセッチャンが怖がっている。目の前で食べてみせた。

気がつくと、さっき買ってきたピザポテトを横になりながら食べていた。セッチャンも同じように食べていた。

「これヤバくない?」

「ヤバイ」

何がどうヤバイかどうでも良かった。今感じてる世界一うまいピザポテトを味わう時間が少しでも長く続いて欲しいと思った。

いつの間にか日が暮れてカラスが鳴いている。

先輩の奇策をすっかり忘れてしまうところだ。セッチャンからお母さんに連絡してもらう、今晩は僕の家でご飯を食べると。

まだ少しフラフラしながらセッチャンを自転車の荷台に座らさせて勢いよくペダルを踏んだ。いつもより時間をかけて家まで進む。もう既に酔っぱらっているサラリーマンがフラフラ歩いていてそれをよけながら進むとセッチャンが「zombie 」と言った。

台所から音がする。僕はあまり緊張することはないのだけど、この時だけは異様な緊張感に包まれていた。

続く。