2015年10月19日月曜日

あーあ、バードマン観ちゃったよの巻

あーあ、観ちゃった。昨日久しぶりにデーブイデーを借りてきた。

観ちゃったと書いたのには理由がある。今回は7タイトル借りてきてだ、2番目に"観ちゃった"のである。たけし映画「龍三と7人の子分たち」は新作だった為2日以内に返せ馬鹿やろうとTSUTAYAの店員に釘を刺されていたので、どうやってもトップバッターである。

いやー笑いに笑わせてもらいました。

んでだ、あとの6タイトルはどれから観ても誰も文句は言わない状況のなか、おもむろに手に取ってしまったアガデミー作品賞タイトル

"バードマン"

まあ、アガデミー賞作品はだいたい観てきているので受賞作がそのままいい映画になるといった単純なイコール式に当てはまるものでないことは知っているし、ハズレも勿論あるし、評判もたいして耳に入ってこなかったので、正直油断しておりました。

開始からビビッタお。

プレイボールの掛け声の後、余裕しゃくしゃくの一番ライト俺。ピッチャーバードマン、第1球投げました!ズバン!

ど真ん中ストレート170キロは出てたと思う。

いやいやいや、ちょっと待ってちょっと待ってと体勢を立て直そうとしてるまに後の祭り。残り2球もど真ん中ストレートで秒殺の見逃し三振である。

まだ観ていない人でこれからバードマン観ようと思っている人に忠告しておきたいことが2点あります。

まず1点目は副題の「無知がもたらす予期せぬ奇跡」をなかったことにして頂きたい。読まなかったことにして頂きたいのである。ここまで本編の邪魔をする副題の存在こそが奇跡なのだ。

2点目は観る前に少しだけアイドリングを上げておいて欲しい。これはホントにお願いしたい。目隠しされて取ったら、いきなりジェットコースターだったらビックリするでしょ。

今かいたジェットコースターやバンジージャンプやユニバにあるアトラクションに今から乗るぞと覚悟したほうが身のためだ。

この乗り物感は斬新なカメラワークに他ならない。見た人は必ず「こんなのはじめて」ポッ、となるに違いない。男の子も少しだけ女の子の気持ちになるんだ、どうだ気持ち悪いだろガハハ。

バードマンという乗り物に乗って映画やアメリカやおじいちゃんやお父さんや娘やエドワードノートンや恋人やインターネットや演劇やニューヨークやヒーロー物や純粋な芸術や現実と虚構やいろいろな物をフィクションのフィクションつまりメタフィクションで観るエンターテイメントである。

ジャンルはブラックコメディーって書いてあったがジャンル分けなどいったい何の意味があろうか?この映画はバードマンである。だから俺的ジャンルはバードマンなのだ。

あれ?どっかで聞いたことあるタイトルだなあ~、どこで聞いたのかなあ~、なんか聞いたことあるな~、あ!

「バットマン」てありましたよね?はいありました。

え?バットマンの主役は誰だっけ?すぐ名前出てきませか?いやずっと同じ人じゃないんすけど、その昔はそう

マイケルキートンです。

今回の主役も、はい、そうです。

マイケルキートンです。

バードマン、バットマン、マイケルキートン、マイケルキートン、マイケル富岡

ですよね。もうお分かりですよね。バットマンじゃなくてバードマンてしなきゃダメなんす。いや間違いなくバットマンじゃないしねwww

他の配役もこの手法で、ヒーロー物に出ていた人をワザワザあてがっております。

痛烈な批判や皮肉、ブラックユーモアに全力を注いだらこんなんでましたけどみたいな感じで、ついでにアガデミー作品賞もとれちゃいました的な。

まーオッサンの独り言として言わせて貰うと、今回のアガデミー賞選考、楽だったんちゃいますの?他のノミネートがなんだったかが思い出せないんですが、これに勝てる映画はそうないと思います。

皮肉や批判やブラックユーモアて書きましたが、これって中途半端にやると失笑か炎上のどちらかにしかならないんす。全力で本気でやるっつうのは生半可な計算や技術じゃできないっすよ、だから観ていて感じるのは監督や俳優たちの映画に対する深すぎる程の愛を感じたんすよ。ブラックなユーモアを真剣に演じれば演じるほど、真剣に撮れば撮るほどなんか広がるジワ~としたネットリした映画愛。

映画や演劇に対するアメリカ人の姿勢って半端ないっす。向こうの映画館で映画を観たことがあるならすぐわかる国民性の違い。普通の映画館でもいい映画ならスタンディングマスターベーションいやオベーションすよ?ジャッキー映画なら、アクションシーンで痛い映像なら一斉に「オウ、ノー」ですよ?ジムキャリーのコメディーなら「ガハハ」の嵐っすよ?

小さいときから今の感情をそのまま表現しなさいと教えこまれているんでしょうか?とにかくリアクションがでかいのなんのってアナタ。

だから、ちょっとでも映画の話をそこら辺に歩いている人にでもふってみてくださいな試しに、そんなん阪神ファンにバースの話をふるのと同じっす。向こう4時間は帰ってこれませんよ。

庶民レベルで映画論や演劇論を語れる国民性というか文化レベルがあってさらに今回のような、いかにも通好みなメタフィクション、ブラックユーモア、そしてあまり行き過ぎないように配慮された計算で観てる人の心を鷲掴みであります。

行き過ぎるとどうなるかと言えば、スタンリーキューブリック作品や、デヴィットリンチの「マルホランドドライブ」的なぶっ飛び系になるんすけど、これらの作品すらきちっと評価できる素養がアメリカ全体にはある、ただ今回のバードマンが良かったのは行き過ぎないところギリギリチョップな感じが堪らない堪らないサマランチ会長なんす。

A級?B級?をいったり来たりしながらの最後真ん中ストレート、ズバン!

この監督半端ねえなと思ってググッたらあの「バベル」の監督でしたな。で、でたー菊地凛子さんとか菊地凛子さんとかブラットピットとか菊地凛子さんが出てる奴~www www www with

あれも好きでしたよ僕。同じ時期に「マグノリア」も借りて観たりしてたし、なんかこのストレートじゃないストレート好きなんすよ、ツーシーム的な。

いやー細かく分析してあーだこーだ言うこともできるっすけど、ここはブルース・リーの「Don't think feel 」でなるべく感じたものを感じたままに書きました。

ネタバレもほぼほぼなく相変わらず何言ってるかわからない感じになっちゃいましたが、観てない人にいいたい。はやくいいたい♪とってもはやくいいたい♪

ダダダダ、「観て」

んじゃ残りの映画みまふ。

2015年10月14日水曜日

野党税率

「今日から野党税率が施行されることになり明日からの衆議院選挙に対する影響が懸念されるなか、我々有権者はどう考えるべきか?」

「今日はこの野党税率について特集いたします。」

とうとう施行されることになったこの野党税率、しかしこの法案、今までのカスみたいな子供騙し法案と訳が違うのだ。

日本ではかれこれ戦後200年、その殆どを自民党が政権与党に君臨してきた。一番最後に与党の座を明け渡したのは134年前、民主党が3年間だけ、それもボロカスに罵られ、国民中から嘘つきと呼ばれ、なかば村八分的に引きずり下ろされてからもう130年以上にもなる。この国の民主主義は、もはや民主主義とは呼べず、一部の国民は自民党一党支配と、隣の国にかけた表現を用いてこの状況を揶揄した。

三権分立や国民主権など聞えのいいものは全て形骸化しあってないようなものに。それをいいことに次から次へと法案を成立させていった自民党。自民党総裁選に関わる規定も変えに変えて今では総裁任期は20年にまで伸びた。

選挙をしたところでまったく負けないので解散総選挙すらお祭り的なショービジネスと化した現代では総理大臣の任期は自民党内の総裁任期と直結する。すなわち、総裁任期を改定していけば知らない内に総理大臣の任期も延びるのである。

何年かに一年延ばすというやり方で、知らず知らず延びた総裁任期、その期間20年w

これは独裁政治をずっと続けてきた他国の独裁者も舌を巻く期間である。民主主義の形を崩さずに実質独裁に持っていっているのでこれほど悪どいものはない。

しかし、ニーチェに死んだと言われた神は生きていたのかもしれない。いやそう理解しないと納得できない事態になった。

その総裁任期17年目を迎える斎藤総理肝いりの法案が去年の国会で成立した。

「野党税率」である。

この法案、聞いてビックリ見てビックリ。なな、なんと野党に投票した者は消費税から所得税、並びにその者が経営者の場合、法人税すら減税措置をうける。

表向きの趣旨は、与党に投票した者なら納得してその国の税金を払うので脱税も少なく内乱も抑えられる、しかし万年野党に投票している者はだんだん危険な思想を持ち出したり、同じ税金を払う時に感じる痛税感も与党派の5倍はあるとの研究結果も出た。この状況を続けるのは民主主義としても良くない上に内乱の危険を高めるだけだと学者達があちこちでいいはじめたのである。

その税率も大変な数字で消費税25%から10%に、所得税率5%~40%のところ0%~20%、法人税は40%から20%と馬鹿か?と思わせる税率なのだ。

そのかわり選挙にいかなかったものは増税措置、全て関連する現状税率+10%である。これはヤバイ、消費税35%は殺人級。よって投票率は95%を越えるのではないかと言われている。

しかもだ、野党に入れることで受けられる減税措置にあたるので、間違っても自分が投票した議員や党が与党になってはいけないのである。

こんなふざけた法案を何故、与党から出されたのか?それは2世議員である総理自身が囲み取材で明らかにした。

「総理!何故、野党税率など野党に有利な法案を立案されたのですか?」

「いやーさあー、僕2世議員じゃん、親父ってか前総理も、その前の総理も与党に有利にしすぎたよね、選挙したって負けやしない、この前なんか閣僚10人スキャンダルであげられたのに70%の議席とれちゃうんだもん、面白くないよね、だから」

なめ腐っている。完全になめ腐っているのだが、同じ与党議員から反発の声もないことはない当たり前である。しかし、絶大な権力を持つ総理にたてつくということは死を意味する。前回の選挙では野党税率に反対した議員全てに刺客を送り全滅させた。

自身の任期も後3年、どうでもいいと言えばどうでもいい状況、かつ側近の記者にはこんなことを漏らしていたという。
「いやー僕の目が黒い内に野党になってみたいものだ。」

この発言は大変な騒ぎになったのだが、嫌味ではなく本心だとA記者は記事に書いた。実際本心だったらしく頭の弱さを露呈した形になったのだが、国民はお祭り騒ぎである。

野党税率法案が成立した次の日、案の定殆どの新聞で1面を飾ったが、東スポだけは「ミラクル山田、血だらけ」とプロレスラーの流血シーンを1面にしていた。

今回の衆議院選挙は世界中から注目されあらゆる国からジャーナリスト達が日本に滞在しいろいろな情報を各国に報道していた。ある国の報道では特集で、予想屋さんが取材されていた。

競馬や競輪、競艇、オートレース会場にいる予想屋さんとまったく一緒の野党予想屋さん。

イギリスのブックメーカーもこの予想屋特集をオッズの参考にしたとかしないとか。

政治にまったく興味を示さなかった奥様達や若者でも今回ばかりは真剣に勉強した。何故なら絶対に与党に投票しない為である。

これを受け、野党はより細かくなっていった。昨日まで毎日のように離党や分離を繰り返したのである。より野党になりそうな空気を出すことで与党に近づくという謎なカラクリに野党は今まで以上にバラバラになったのである。

野党は野党で「目の黒い内に与党になってみたい」のだ。

しかし、国民は政治家が思うほど単純ではなかった。いくら金銭で釣られたとしても滅茶苦茶な国になることを望んではいない。しっかりとした経済政策、しっかりとした国防政策、しっかりとした外交政策、しっかりとした福祉政策をひとつひとつ吟味し、真剣に投票したのであった。

開票日。

テレ東を除き全ての局、ネット放送局の全ては選挙特番である。因みにテレ東はポケモン22の映画を放送していた。

国民中が注目する開票結果に固唾を飲んでテレビにかじりついた。続々と当確が発表されるなか、自分達が投票した議員や政党に当確が出ると「あちゃー」とうつむく者、なかなか票が伸びない議員や政党に投票したものは「そのまま、そのままー」とまるで場外馬券売場のような声を漏らしていた。

やがて投票が全て終り結果が出た。

勝ったのは与党、自民党であった。あれだけやってもギリギリで過半数を保ってしまったのである。しかし不思議と国民の顔は満足感に溢れていた。選挙に勝利し満足する与党派と、見事野党税率をゲットした野党派は野党派で祝杯をあげた。

馬鹿げた法案は謎に国民をひとつにまとめてしまったのである。

2015年10月10日土曜日

痣(あざ)

コンビニ要塞もなかなか仕上がってきた。バックヤードの冷凍庫は改造し、切り方もわからない豚肉まるごと吊るしてみるとまるでゾンビ映画によるある光景だが、残念ながらゾンビすら出てこない。

このところ毎朝、日の出をみるのが日課になっていた。

古代人が太陽信仰していたという話しは多分本当だろう。

専門書を取りに行った図書館で、何故か手に取ってしまった哲学書や宗教書。

時間が許す限りなんて言葉が虚しいほど時間は有り余っていたので思いのまま読みあさった。

海外に出てはじめて日本の良さがわかるように、人がいなくなってはじめてわかることがある。

お金の意味もそのひとつだ。

お金のいらない生活は想像を絶するほど辛いものだった。お金を稼ぐことが大変で辛いと思って働いてきたが、そのお金が必要なくなると楽になるのかもと勘違いしてきたのだ。

発電機を運ぶのに腰を痛め、手は傷だらけ、お金さえ払えば簡単に終わるものを全部ひとりでやらなくてはいけない。

お金なら死ぬほどある、コンビニの隣にある銀行にたんまりある。しかし、なんの意味もない。

人がいてはじめてお金はお金に成りうるのである。

その人にさえ僕は嫌気がさすことが多かった。みんないなくなればいいなんて思ったこともある。上司の嫌味や彼女との喧嘩、取引先での嫌がらせ、先輩からのいじめ、ただ今はそんな嫌で嫌で仕方なかったあの頃を愛しく思うのである。

嫌なものでも関係してるということ、自分が誰かと繋がっている感覚を取り戻したい一心で、何かヒントがないかと本を読みあさった。

周りの家は不思議と早く傷んでいった。空き家は不思議とすぐ腐る。多分人が住んでいるかいないかがその家を家にしてくれるかどうかの分かれ道なのだろう。

僕はふと手の甲にある痣(あざ)をさすった。生まれつきあるこの痣に何か意味を持たせるように優しく撫でた。本をたたみ、コンビニ要塞に戻る。

途中夕日を眺めながら車を走らせた。うっすら雲がかかり絶妙な色で燃える太陽はしばらく追ってくる。ビニール袋が宙にまった。ふわふわとビニール袋が漂う様子に見とれながらアメリカンビューティーのワンシーンを思い出していた。それは今まで見たこともない美しい光景でこの酷い現実から僕を救ってくれそうな感じすらする。

真っ白な建物の門をくぐると婦長さんが頭を下げた。私も慌てて頭を下げる。ゆっくりと歩きながら説明を受けているうちに担当する患者さんの病室についた。「あなたに担当してもらう田中さんよろしくね」

車椅子にのった色白の若い男性が影からゆっくりとこちらに近づいてくる、、タイヤを回す左手の甲に大きな痣があった。

おわり。

2015年10月7日水曜日

コンビニ

朝目覚めると誰もいなかった。

会社についた。

早くきて書類を片付ける為だ。

一番乗り、誰もいない会社は雑用をするには最高である。邪魔者はいない。電話もならない。上司の嫌味も部下の悩み事もない。

一気に雑用を終わらせると一服したくなった。コーヒーを淹れながらタバコに火をつける。

事務所の壁に貼られている営業グラフを眺めながら勝手に上司気分を味わう。

あーこいつ今月はサボッてるなあ、こいつは今月頑張ってるじゃないかあ、と人のグラフと中身はよく見えるものだ。

自分のグラフは目標までまだまだなのに。

時計に目をやると8時10分前、もう始まるというのにやけに静かだ。おかしい。

出社時間だ。8時になっても誰も来やしない。8時10分になっても来なかった。8時20分になっても来なかった。8時30分になったところで今日は休みの日かどうか疑わしくなってきたが、そんなことはない今日は月曜日だ。

電話すら鳴らない。おかしい。明らかに何かがおかしい。先輩から上司から電話した。でない。スマホでググッてみたが、ネットに繋がらない。実家に電話したが誰もでない。

いったい全体どうなっているのだ?やけに早く会社についた事を思い出した。そうだ。車がまったく走っていなかった。けど信号は動いていたぞ?だんだん不安になってきた。

急いで車に乗り込んだ。

実家に向かう。途中、案の定車とすれ違うことはなかった。実家のドアは閉まっていたが鍵の隠し場所は知っている。

開けて中に入る。声を出したが誰も返事はしない。部屋中を探しても誰もいないのだ。まさか僕以外の人間だけ消えたのか?いやそんな事はない筈だ。

人は極限の状況を簡単には認められない。

しかし、一日中車を走らせて町中捜したがひとっこひとりいないではないか。

どうする俺。

お腹がぐうと鳴いた。そう言えば朝から何も食べていないことを思い出した。何か食べなければ、それから落ち着いて考えよう。と思っても落ち着ける状況ではない。

いつも外食ばかりしてきた癖で牛丼屋にきてしまった。車を降りた瞬間笑いが止まらなくなる。いやいや、誰もいねえっつうの。牛丼屋で働いた事がなかったので、近くのコンビニに向かう。

お金がこの状況でまったく意味の無いものだという事を認識するまで半日かかった。しかし、なかなか今までの価値観をそう簡単に捨てられる訳でもなくお尻のポケットにはしっかり財布がおさまっている。

コンビニに入るとピロピロピロと客が来たことを示す音が虚しくなった。

「すいませーん」と大声を出すも誰もいない。お弁当や惣菜棚の冷蔵スイッチは切れていない。電気はきている。しかしこれも時間の問題ではないかと思った。発電所に人がいない状況でどうなるかなんてわかりもしないが、いつかは止まるであろう。とりあえず弁当をしっけいし、ビールをあけた。なんでも良かったが何故かエビスにする。

勝手に事務所に入った。狭い事務所には防犯カメラのモニターがある。モニターの下には録画されたテープがぎっしりつまった棚があった。

誰もいない、誰もきやしないモニターを見ながら弁当を食べる。

いろいろ考えた。このまま誰もいない街で生きていくとしたら何をすればいいか、今まで生きてきてこんなに真剣に考えた日はなかった。何て日だ!と誰かが言っていたのを思い出しつつ、真面目に考える。ネットは繋がらない、人がいない。辛うじて電気はきてるがいつかは止まる。水が必要だ。電気もいる。何から手をつければよいのだ。俺一人分の食料なら街で調達できよう、しかし、まてよ、冷蔵されているもの冷凍ものはいつかは溶けてしまうではないか!やはり電気だ、発電機だ。発電機を盗んできてその電気をコンビニのバックヤードや冷蔵、冷凍に繋げよう。あと車を使ってできるだけ効率よく食料をこのコンビニに集中させるんだ。まて、ガソリンはどうする?いやスタンドは街にかなりある。どれか枯渇しても大丈夫だろう。水は大丈夫か?あわてて水道の蛇口をひねった。出る、しかしこれもいつかは止まるのか?いや飲めなくなるかもしれないな。わき水の出るところでポリタンクに入れて運ぶとするか、あといろいろ知識が必要になる図書館で農業、工業系の専門書、百科辞典も運んでこよう。いざとなれば農耕をしなければなるまい。なんなんだこの状況は、しかししばらくの間はなんとかなりそうなところまでうっすら方針が決まると急に酔いがまわってきた。

酒だ酒がいる。酒ならぎっしり並んでいるではないか!片っ端から飲んでやった。ベロベロになってきたが、今度は急に寂しくなった。彼女とのプリクラを見ながら泣きそうになる。目をつむり首をふった。

ん?閃いた。この防犯ビデオ、まだ使えるな。酔ったまま服を脱ぎ捨てた。少し寒いが裸で店内を歩きまわってやった。すぐに事務所にもどりテープを巻き戻す。再生。馬鹿すぎる男が裸で店内をうろついているではないか!大笑いしたが、まだ足りない、いろいろ台詞を考えては大声で叫びながら歩いたり、一人コンビニコントをやったり、カミシモふりわけてレジの上で落語もしたりした。その度に事務所に戻っては巻き戻しゲラゲラと笑った。さんまさんの気持ちがイタイほどわかり。俺最高である。しかし、だんだんと飽きてくるのである。

酔いが覚めてくると、今まで一生懸命働いてきた自分の仕事が糞の役にもたたない運命を呪った。農家の息子ならまだ楽だったかもしれない、技術者だったら、水道局の人間なら、燃料屋だったら、電気屋だったら、建築家だったら、何か役にもたったろう。第三次産業の虚しさが身にしみる。漁師でもいい。

くそ、なんなんだサービス業って。嘆いても仕方がないこの街には人がいないのだから。ん?他の街にもいないのか?本当に誰もいないのだろうか?車を走らせるか?電車の運転でも調べて乗ってやろうか?いやこの場所を離れるのは得策じゃない。のろしをあげて誰かに見てもらおうか?んー。わからない。

その日はコンビニで寝た。

次の日からなかなか忙しくなった。使えそうな冷蔵トラックや搬送車など働く車を片っ端から盗みコンビニの駐車場に並べ、あらゆるところから冷凍の肉や冷凍食品を運ぶ。発電機を運ぶのに死ぬ思いをした。いや重いのだ。ジャッキアップで隙間をつくり台車を滑り込ませる。販売店の入り口にある階段に板を張り付けバリアフリーにし、搬送車の荷台に真っ直ぐ繋げた。半日格闘してうまくった時、嬉しくて泣いてしまった。

続く

2015年10月4日日曜日

面接

今日は面接の日だ。これまでしてきた努力、耐えがたきを耐えてきた学生生活にピリオドをうつべく僕はこの日の為にこの日の為に辛酸なめこの3倍の辛酸をなめてきたつもりだ。

実際のところ"辛酸なめこ"がどれほどの辛酸をなめてきたかは正直わからないし知る必要もないと思っている。

何故なら僕は本物の酸性物質をなめてきたからだ!塩酸からはじまりいろいろな酸という酸をなめてきた。最終的にガラスを溶かすフッ酸までなめてやった。

付き合う女もできるだけ酸味の強そうな女を選んだ。簡単に書いたが実はこれすこぶる難しい、触れずとも酸味が強いかどうかを判断するにはそれそうとうの鍛練が必要なのだ。

より酸味の強い女へとステップアップしていった。

お陰で僕の舌は普通の人の半分もない。舌ったらずゆうか舌が本当に足りないのである。このことからもそこには存在しない見えない酸、つまり辛酸をなめているのだ。

絶対に僕はこの会社に必要な人材だと確信している。大きく透明なガラスドア、とってはなく軽く触れて下さいの文字もないお洒落なドア。その前に立つとゆっくりと奥に扉が開いた。

左奥のほうに受付がみえる。圧倒されるような美しい女性が慣れすぎて大してエネルギーを消費しない笑顔で迎えてくれた。

「こんにちは、どのような御用件でしょうか?」

「め、面接にまいりました。」

今、凄い顔になったのを僕は見逃さなかった。完全になめた顔をしたのである。僕の舌が足りてないしゃべり方も、下の中ぐらいの顔も、面接にきたということも全てにおいて舐められたのである。僕は絶対にこの会社に入社してやる、そして偉くなってこの女にあんなことやこんなことをしてやるんだ!想像できないような恥ずかしさを思い知らしてやるのだ。僕はそう胸に誓い面接会場のある7階へ行くのにエレベーターにのる。

7階に着くと会場の前に並べられた椅子に座らされた。会場の扉は閉ざされていて、張った紙に大きく"大日本酸性株式会社面接会場"と書かれていた。

日本をいや世界を代表する超一流企業だ。酸に関するあらゆる物質をつくり全世界に販売している。世界シェアは90%。創業者の辛酸太郎は今の僕よりも舌が短かったらしい。

いよいよ僕の番がまわってきた。

面接官は3人、右から強面の男性、真ん中に優しそうな男性、左に綺麗だけどどこかトゲを感じる黒渕眼鏡の女性だ。

一瞬左の女から"あなた童貞でしょ"という心の声が聞こえた。ぼくは触れずに酸味が強いかどうかを判断していく過程で何故か人の心の声を聞ける能力を身につけてしまっていたのだ。

まるで臭くてさわりたくもない学校の雑巾を見るような目で見られていた。

くっ、こいつ確かに綺麗で美人だ。しかしそうとう酸味が強い、わかる俺にはわかるのだ。さすが大日本酸性株式会社の面接官だけある。酸味の弱い面接官なわけがないのだ。

志望動機を聞かれた。

「はい私は幼い時から酸性のものは全てなめてきました。たまに間違えてアルカリ性のものもなめてしまいましたがその時はほどよく口の中で中和したものです。はじめは弱い酸から始まりつい昨日はフッ酸をなめてきました。」

面接官「おぉ」

「見てくださいこの舌、もう常人の半分もないのです。」

面接官 ざわざわ

「僕はお陰で"きき酸"もできるようになり、付き合う女性も酸味の強い人と人生の全てを酸に注いできました。」

何故か男性面接官が女性面接官の顔を見る。

「今の世の中一寸先は闇でございます。アメリカ経済も中国もドイツを中心としたユーロ圏もまったくもって安心できるような材料はございません。その中でも特に日本は不安定でございます。まったく打つ手のない少子高齢化、どこに使われているか不透明な消費税、アメリカの言いなりの政府、膨らむばかりの約1000兆を超える国の借金、足元をすくわれる大企業、ネットの時代と言われ続けてなん十年、これからこれから詐欺みたいな胡散臭い世界、なかなか飛ばないロケット、なかなか辞めないイチローと橋下さん、辞めないで欲しい山本昌が先に辞める辛さ、どうでもいい日本シリーズ、冬にはヒートテック、福山まで結婚しちゃう世の中、シールズという団体、デモに対してデモをする人々、共産党の提案に難色を示す民主党、家から一歩も外にでることなく楽しく過ごすニート、神は死んだと言ったのはニーチェ、逃げるなと言われたら逃げてもいいと言われ、勉強しなきゃと思ったらしなくていいと言われ、死ぬまでに戦争を見たいと言った筒井康隆、その筒井先生に猫を殺せと言われたショコタン、毎年ノーベル文学賞にノミネートされる作家さんの心中、体を売ってきた人が売れなくなった時の心中、三沢のエルボー、川田のパワーボム、ジャンボ鶴田のオー、マギー人気、携帯不況、若者の○○離れ、わざと炎上させることを生業にしてる人々、常に引きずりおろすことだけを考える人々、難しいエンブレム問題。」

「だから僕は必死に考えました!どうやったら世の中を変えることができるのか?死ぬ気で考えた結果がこれです」

僕は舌を出した。

「そうだ、酸をなめよう!なめてなめてなめつくそう!そうすれば世の中変わるんじゃないかと考えたのです。実際かわりましたよ、舌が半分になり、おまけに人の心の声が聞こえるようになりました。」

バタン、扉が開くと屈強な男たちが僕の腕を掴むとそのまま会社の外に放り投げられた。

まだ続きがあるのに、志なかばで中断された面接。

僕はまた辛酸をなめることになった。