2015年10月4日日曜日

面接

今日は面接の日だ。これまでしてきた努力、耐えがたきを耐えてきた学生生活にピリオドをうつべく僕はこの日の為にこの日の為に辛酸なめこの3倍の辛酸をなめてきたつもりだ。

実際のところ"辛酸なめこ"がどれほどの辛酸をなめてきたかは正直わからないし知る必要もないと思っている。

何故なら僕は本物の酸性物質をなめてきたからだ!塩酸からはじまりいろいろな酸という酸をなめてきた。最終的にガラスを溶かすフッ酸までなめてやった。

付き合う女もできるだけ酸味の強そうな女を選んだ。簡単に書いたが実はこれすこぶる難しい、触れずとも酸味が強いかどうかを判断するにはそれそうとうの鍛練が必要なのだ。

より酸味の強い女へとステップアップしていった。

お陰で僕の舌は普通の人の半分もない。舌ったらずゆうか舌が本当に足りないのである。このことからもそこには存在しない見えない酸、つまり辛酸をなめているのだ。

絶対に僕はこの会社に必要な人材だと確信している。大きく透明なガラスドア、とってはなく軽く触れて下さいの文字もないお洒落なドア。その前に立つとゆっくりと奥に扉が開いた。

左奥のほうに受付がみえる。圧倒されるような美しい女性が慣れすぎて大してエネルギーを消費しない笑顔で迎えてくれた。

「こんにちは、どのような御用件でしょうか?」

「め、面接にまいりました。」

今、凄い顔になったのを僕は見逃さなかった。完全になめた顔をしたのである。僕の舌が足りてないしゃべり方も、下の中ぐらいの顔も、面接にきたということも全てにおいて舐められたのである。僕は絶対にこの会社に入社してやる、そして偉くなってこの女にあんなことやこんなことをしてやるんだ!想像できないような恥ずかしさを思い知らしてやるのだ。僕はそう胸に誓い面接会場のある7階へ行くのにエレベーターにのる。

7階に着くと会場の前に並べられた椅子に座らされた。会場の扉は閉ざされていて、張った紙に大きく"大日本酸性株式会社面接会場"と書かれていた。

日本をいや世界を代表する超一流企業だ。酸に関するあらゆる物質をつくり全世界に販売している。世界シェアは90%。創業者の辛酸太郎は今の僕よりも舌が短かったらしい。

いよいよ僕の番がまわってきた。

面接官は3人、右から強面の男性、真ん中に優しそうな男性、左に綺麗だけどどこかトゲを感じる黒渕眼鏡の女性だ。

一瞬左の女から"あなた童貞でしょ"という心の声が聞こえた。ぼくは触れずに酸味が強いかどうかを判断していく過程で何故か人の心の声を聞ける能力を身につけてしまっていたのだ。

まるで臭くてさわりたくもない学校の雑巾を見るような目で見られていた。

くっ、こいつ確かに綺麗で美人だ。しかしそうとう酸味が強い、わかる俺にはわかるのだ。さすが大日本酸性株式会社の面接官だけある。酸味の弱い面接官なわけがないのだ。

志望動機を聞かれた。

「はい私は幼い時から酸性のものは全てなめてきました。たまに間違えてアルカリ性のものもなめてしまいましたがその時はほどよく口の中で中和したものです。はじめは弱い酸から始まりつい昨日はフッ酸をなめてきました。」

面接官「おぉ」

「見てくださいこの舌、もう常人の半分もないのです。」

面接官 ざわざわ

「僕はお陰で"きき酸"もできるようになり、付き合う女性も酸味の強い人と人生の全てを酸に注いできました。」

何故か男性面接官が女性面接官の顔を見る。

「今の世の中一寸先は闇でございます。アメリカ経済も中国もドイツを中心としたユーロ圏もまったくもって安心できるような材料はございません。その中でも特に日本は不安定でございます。まったく打つ手のない少子高齢化、どこに使われているか不透明な消費税、アメリカの言いなりの政府、膨らむばかりの約1000兆を超える国の借金、足元をすくわれる大企業、ネットの時代と言われ続けてなん十年、これからこれから詐欺みたいな胡散臭い世界、なかなか飛ばないロケット、なかなか辞めないイチローと橋下さん、辞めないで欲しい山本昌が先に辞める辛さ、どうでもいい日本シリーズ、冬にはヒートテック、福山まで結婚しちゃう世の中、シールズという団体、デモに対してデモをする人々、共産党の提案に難色を示す民主党、家から一歩も外にでることなく楽しく過ごすニート、神は死んだと言ったのはニーチェ、逃げるなと言われたら逃げてもいいと言われ、勉強しなきゃと思ったらしなくていいと言われ、死ぬまでに戦争を見たいと言った筒井康隆、その筒井先生に猫を殺せと言われたショコタン、毎年ノーベル文学賞にノミネートされる作家さんの心中、体を売ってきた人が売れなくなった時の心中、三沢のエルボー、川田のパワーボム、ジャンボ鶴田のオー、マギー人気、携帯不況、若者の○○離れ、わざと炎上させることを生業にしてる人々、常に引きずりおろすことだけを考える人々、難しいエンブレム問題。」

「だから僕は必死に考えました!どうやったら世の中を変えることができるのか?死ぬ気で考えた結果がこれです」

僕は舌を出した。

「そうだ、酸をなめよう!なめてなめてなめつくそう!そうすれば世の中変わるんじゃないかと考えたのです。実際かわりましたよ、舌が半分になり、おまけに人の心の声が聞こえるようになりました。」

バタン、扉が開くと屈強な男たちが僕の腕を掴むとそのまま会社の外に放り投げられた。

まだ続きがあるのに、志なかばで中断された面接。

僕はまた辛酸をなめることになった。

0 件のコメント:

コメントを投稿