いつものラブホテル街にさしかかると、
セッチャンのお母さんがスーツ姿の男性と出てきた。
この前見たセッチャンのお母さんとは別人のようで、しかし一目でわかる間違いのない顔。僕は息を飲んだ。
僕は急にブレーキをかけるのも怪しく思われると思い、まるで空気のように息を止めながら二人を追い越した。
気づかれてはいないと思うけど。
その日は昨日の疲れと得たいの知れない具合の悪さで学校を休んだ。
何故かまた世の中がつまらなく感じてきた。
新聞配達も辞めると電話して学校もさらに3日休み、4日目の朝、母に髪の毛をつかまれて怒鳴り付けられた。
「ヒロ!何考えてんのよ!起きなさい!学校行きなさい!」
僕は黙って学校へ行くことにした。
亮くんが仕切りになんで休んでいたか聞いてきたが無視してしまった。
変な罪悪感があって一言「ごめん」とだけ言うと後は全て黙っていた。
不思議と人の声を無視すると鳥の鳴き声だけやけに耳に残り机に顔を伏せて寝る。
家に帰るとすぐに布団に入った。再放送のドラマからCan you keep a secret が流れてくる。いや誰にも言えないよと布団を頭までかぶる。
大して眠くないのに眠りたかった。
だんだんあれは何かの間違いなんじゃないかと思えてきた。見間違え、他人の空似。どちらでも関係ないなら、見なかったことにしようと決めたのだった。お化けとは逆に。
セッチャンからラインが来てすぐに向かえに行くと。ドアを開けたのは紛れもなくホテルから出てきたセッチャンのお母さんだった。何かいろいろとお礼のようなものを言われていたがまったく耳に入ってこない。お化けの言葉は聞こえないのだ。「あっはい」を適当に繰り返してセッチャンの部屋に入る。
セッチャンは少し体調がよくなったのか少しふっくらしてきて完全にzombieではなくなっていた。嬉しかった。
「学校行ってるの?」
「うん」
「そっか良かった」
「てか俺のほうが最近休んでたし」
「なんかあったの?」
「いやなんもないよ」
「サボろうと思ったら母さんに怒られた」
「お母さんに会いたいな」
「キレたらヤバイからやめといたほうがいいよ」
セッチャンがPCをたちあげるとお父さんが好きなのと言ってニルヴァーナのAbout a girlが流れた。
セッチャンもfreeでは会えないの?と冗談を言うと、NO i'm not と答えてベッドに引きずりこまれた。
ビアノの音がしてVanessa Carlton A Thousand Miles が聞こえてくる。○○が好きなのとセッチャンは言った。
何かにあてつけるように彼女を抱きしめた。
終わると天井を見ながら二人で話しをした。お父さんのことオーストラリアのことこれからのこと。会話は楽しかったけどいずれ向こうに行ってしまうだろうなと感じてなんだか寂しくなったし、やっぱりつまらないとこに落ち着くのかと思った。
けどはじめて何かをしたいと感じていた。もがいてみたいと。
続く。
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