僕はあまりしゃべらない。いや人からみればまったく口をきかないのかも知れない。最後に口にしたのは6ヶ月前だろうか1年前だろうか、しかも日本語じゃないきがする。NIKEの靴をキュッと鳴らした。
学校に行くまでの道を歩く。いつもの変わらない道を歩く。繁華街のど真ん中、サラリーマンが反省した猿のように電柱に手をつき嘔吐している。派手な服のホストが「まだまだ飲むよ~」と言いながら勢いよく道に流れてくる。ごみ袋が1ヶ所に集められて緑のネットがかけられていた。カラスが鳴きながら集まり、水をまく魚屋のオヤジがカラスを追い払うと、ピオピオと小鳥が鳴いた。
排水溝から上がる湯気。洗濯物を1週間ぐらい乾かさないで放置したような、卵の腐ったような匂いがするらしい。僕は毎朝のことで慣れている。だからわからない。
白い息が出て、まだ朝は冷えると思った。
繁華街を抜けるとすぐに駅がある。駐輪場から学生がどっと出てくると僕はゆっくり目を閉じた。
何故学校に行かなければならないのかわからない。義務教育とはなんなのだろうか?義務とはなんなのだろうか?教育とはなんなのだろうか?言葉を分解したところでわかるはずもなかった。当然誰も納得のいく答えを教えてはくれない。思えば口数は減っていったのである。
家に帰ればよく話す弟がいるし母ともよく話す。普通そこまで話さないような事までよく話すと思う、ただ思うだけだけど。学校で話しをしないから確かめようがないのだ。別にいじめられているわけではないし、成績も極端に悪いわけでもない。ただ話してもつまらないと思うからだんだんと話すことが面倒になっただけ。
電車に乗るといつも本を読む。母が買ってくる本をいつも拝借していた。あまりにもつまらない現実の世界にいる僕を唯一繋ぎ止めてくれるのは本だけだった。
学校と家の往復はつまらないのだけど、それすらやめてしまったら僕はどこへ行ってしまうのだろうか?無重力空間に解き放たれた物体のように慣性の法則に従いどこまでもどこまでも遠くに行ってしまう気がしてそれがなんだか怖くてやめれなかった。そしてやめなくて良かった。
学校からの帰り道、繁華街はこれから出勤のホステスと客が腕を組んで歩いている、朝いたホストが眠そうな顔でタバコを吹かしている。ネオンはまだついていない、客引きが獲物を狙っている、金物屋のオヤジが水をまいて客引きを追い払うとカアカアとカラスが鳴いた。
信号が赤になり横断歩道の手前でぼーっとしていると向かい側、僕の真正面に色の白い学生服姿の女の子と目があった。
青にかわると、僕から目をはなさずに直進してくる。道路の真ん中、僕の真ん前で立ち止まると
彼女は「Why 」と言った。
僕は反射的に「I don't know why 」と言うと。
彼女はニコッと微笑みサッと僕の右側をすり抜けると、カアカアとカラスが鳴いた。続く
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